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札幌高等裁判所 昭和34年(ツ)20号 判決 1960年2月29日

上告人 中川仁平

右訴訟代理人弁護士 竹原五郎三

被上告人 白坂幸夫

主文

原判決を破棄する。

本件を旭川地方裁判所に差し戻す。

理由

上告代理人竹原五郎三の上告理由について。

原判決は、被上告人が昭和三二年八月二日上告人から弁済期同年一〇月三一日利息月六分の約定で借り受けた金十万円の債務に対し、昭和三二年八月二日から昭和三三年一月三一日までの利息及び遅延損害金として毎月末日頃日歩二十銭の割合による金員を支払つたこと、被上告人が昭和三三年四月二五日元金の弁済として供託した金十万円を同年五月二五日上告人が受け取り、同日昭和三三年二月一日から同年五月二五日までの損害金がなお残存するとの前提のもとにその支払に代えて自転車新車(ST高級車男用)一台を同年六月三〇日までに上告人に引渡すべき旨の契約を締結した事実を各認定の上、前記月六分の利息の約定は利息制限法に違反し、同法第一条所定年一割八分を超える部分は無効であり、既に支払済のものも制限を超える部分は元本債権の存続する限り、その都度元本の弁済に充当されるとの解釈の下に、前記昭和三三年二月一日から同年五月二五日までの損害金は既に完済されたものと判断して、右自転車の引渡請求を排斥したのである。

しかしながら被上告人が昭和三二年八月二日から昭和三三年一月三一日までの利息及び遅延損害金として毎月末日頃日歩二十銭の割合による金員を支払つたとの原判決の認定は、利息制限法による制限外の利息損害金を当事者合意の上授受した趣旨に解されないわけではないのであつて、もしそう認定したものとすれば、任意に支払つた超過部分の返還を請求することができないことは同法の解釈上疑を容れないところである。したがつて前記利息損害金の支払が当事者の合意によるものでなかつたとの事実を確定することなく、漫然と既に支払済のものも制限を超える部分は元本債権の存続する限りその都度元本の弁済に充当されるとの解釈の下に、昭和三三年二月一日から同年五月二五日までの損害金は既に完済されたものと判断して、本件自転車の引渡請求を排斥した原判決は、利息制限法の解釈を誤り同時に理由不備の違法あるものというべく、論旨はこの点において理由あり、原判決は破棄を免れない。

よつて民事訴訟法第四〇七条第一項に従い、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 佐瀬政雄 裁判官 臼居直道 安久津武人)

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